あまりさんののっぴきならない事情

 




「じゃあ、一緒に行くか。
 お前迷いそうだし」
と海里は言った。

 なんだかわからないが、結局、大浴場に一緒に行くことになったようだ。

 あまりは荷物の算段をし、そのまま出て行こうとする。

 いや、待て待て、と海里は思った。

 お前、浴衣に着替えないのか。

 どうせこの女、なんだかんだで、せっかく宿に泊まっても、なにもさせずに帰る気だろう。

 せめて、湯上がりの浴衣姿くらい見せてくれてもいいんじゃないのか?

 なあ、寺坂、と此処には居ない寺坂に向かい、同意を求める。

 そうですよね、支社長、と彼なら熱く頷いてくれるはずだからだ。

 寺坂、今頃、桜田とうまくやっているだろうか。

 最初、寺坂と来ようかと思っていたのだが、寺坂に訊くと、今日は、桜田と約束しているのだと言ってきた。

 どうやら、初めて桜田を誘ったらしいので、それをやめさせるのもどうかなと思い、あまりを連れてきたのだが。

 それにしても、寺坂に、女性に声をかける勇気があったとは、と感心している間にも、あまりは、財布から札を二枚くらい出し、部屋を出て行く準備をしている。

 待て待て。
 着ようじゃないか、浴衣。