あまりさんののっぴきならない事情

 ああでも素敵だ、あの露天、とガラスの向こうに見える白い陶器の湯船を見た。

 でも、中から見えそうだしな、と迷っていると、海里が、
「じゃあ、お前、そこに入れ。
 俺はその間、大浴場に行ってくるから」
と行ってきた。

「ええっ、そんな悪いですっ」

「いや、いい。
 夕食に間に合うように、三十分くらいで戻る」
と言う海里に、

「なんでしたら、私、先に大浴場に行きますから。
 海里さん、此処の露天にどうぞ」
と言うと、

「いや、いい。
 俺は大浴場に入りたいんだ。

 さっき見たら、結構よかった」

「そ、そうなんですか?」
と言いながら、海里の広げたパンフレットを見ていたあまりは、

「ほんとだ。
 素敵ですね。

 私も入りたいかも」

 いいな、このワイン風呂とか。

「……いいですね。
 入りたい」

 あ、総檜の風呂もある。

「……入りたいな」
とぼそりと言うと、

「いや……じゃあ、入れよ。
 誰もあっちに入るなとか言ってないから」
と言われた。