あまりさんののっぴきならない事情

 




 おお。
 なんかすごい部屋だ。

 部屋の中も基本、和風な造りで、隅に藤色の落ち着いた柄の着物がかけてあった。

 部屋のインテリアのひとつらしい。

 素敵だが、物陰からなにか出てきそうで、夜は怖いな、と思いながら眺める。

 一通り部屋の中を案内してくれた仲居さんは、
「では、ご夕食は7時半から、榊の間になりますので」
とその榊の間と大浴場の場所を説明して、去っていってしまった。

 帰って行く仲居にさんに、ありがとうございます、と頭を下げたあとで、気がついた。

「あのー、ところで、私の部屋は何処ですか?」

 すると、無言で床を指差される。

「……下の階?」

「莫迦か。
 いきなり、二つも三つも部屋が取れるか。

 だいたい、この部屋、幾らすると思ってるんだ」

「はは、払います、払います、自分で。
 なので、別の部屋を……」
と財布を開けたが、急に出かけたので、三千六円しか入っていなかった。