あまりさんののっぴきならない事情

「でもまあ、今日、使えてよかったな」
と言われ、

「はいっ。
 此処まで来たかいがありましたっ」
とあまりが言うと、

「……そうだな」
と言って、海里が黙る。

 まあ、見知らぬ山中をさまよっている今言う言葉ではなかったか、と思いながら、月と一番星を見上げる。

 周りに灯りがないせいか、いつもより明るくて綺麗だ。

 空気も澄んでいる気がする。

「……寒くないか?」
と海里が訊いてきた。

「あ、はい。
 大丈夫です」

 あまりも薄手のコートを着ていたので、寒くはなかった。

 そのまま沈黙しかけて、実は自分と同じくらい沈黙を苦手としているらしい海里が言ってきた。

「あまり、この場に相応しい話をしろ」

 ええ? と言ったあまりは、この場に相応しい話か、と辺りを見回したあとで、

「これは、私が小学校のとき、草ひきの時間に聞いた話なんですけど」
と小声で語り出す。

「二歳になる子どもがとある交差点に来るといつも……」

「待て、それ怖い話じゃないのか」

 その話し方から言って、と言われる。