あまりさんののっぴきならない事情

 




「……持ってやろうか」
と海里が言ってくる。

「いや、いいです」
とあまりは答えた。

 自分が持ってきたのだから、他人に持たせるのも悪い気がしたからだ。

 すさまじく点々としかない道沿いの街灯を頼りに歩く。

「どうだ?
 二日だが、会社勤めをしてみて」
と海里が訊いてきた。

「カフェもまだ慣れないところに、また新しい環境で疲れたんじゃないのか」
と言う海里に、

「いえ、楽しいです」
と笑って答えた。

「最初はどうなることかと思ってたんですが。

 期限が切られている気楽さがあるせいかもしれませんが。
 海里さんの会社は良い方ばかりのように感じます」

 二週間しか居ない、と決まっているのは、寂しくもあるが、気楽さもある。

 草野のことにしたって、この先は揉めるかも、などと不安に思わなくていい。

 ずっと居なければならない桜田たちとは、感じ方がまた違うのだろうな、と思っていた。

「そうか。
 なら良かった……」

 様々な揉め事を知っているせいか、そう信じてはいない口調で海里は言ってきた。