あまりさんののっぴきならない事情

 



「太陽というより、海を目指していくべきでしたかね?」

 ずいぶんと歩いた頃に、あまりがそんなことを言い出した。

「街って海外線沿いには必ずありますもんね」

「どうやったらわかるんだ。
 この山の中で海の方角が。

 潮の匂いでも漂ってくるのか……」

 そんなしょうもない話をしているうちに、とっぷり日も暮れていた。

「……おかしいな、まだ電波が通じない」
と海里はスマホを見る。

「お前、これ、実は、逆向いて歩いてないか?」
 更に山に入ってってってる気がするんだが」
と言うと、

「そうなんですかねー?」
と小首を傾げたあまりは、

「それにしても、道通すだけじゃなくて、携帯基地局も建てといてくれればよかったのに」
と何処の誰ともわからない国会議員に喧嘩を売り始めた。

「人居ねえだろ、クマが携帯使うのか。

 っていうか、パトリックも此処はねえわっつって、笑ってたから、もうあの土地はないと思うが。

 だが、あまりの田舎っぷりに呆れて、多少金額の条件を引き上げてくれたようだから、かえって良かったかもな」