あまりさんののっぴきならない事情

「そうだな。
 それがベストだったろうが。

 お前がまた阿呆なことを言い出すんじゃないかと思って、ハラハラしながら、小一時間タクシーに乗ってるの嫌だからな」

 まあ、とりあえず、タクシーを呼ぶか、とスマホを出して固まった。

「……あるのか、この日本に、まだ圏外の地域がっ」

「ああ、ほんとだ」
と横からひょいと覗き込んできたあまりのつむじが鼻先に来て、どきりと身を引きそうになる。

 あまりは、パトリックと話したときの動揺を引きずっていて、特に気にしているようにはなかったが。

「私のも駄目ですね。
 そういえば、タクシーの人も無線で話してましたよね」

 つまり、さっき、運転手が言いかけた、
『でもこの辺りは』
の続きは、

『携帯通じないから』
だったのだろう。

 下手にあそこにタクシーがもう一台居ると言ってしまったから、安心してそれ以上言ってこなかったのに違いない。

 あまりはもうタクシーの消えた山陰を見ながら、
「さっきのタクシーにもう一台呼んでもらうべきでしたね」
と真っ当なことを言ってくる。

「お前が騒ぎを起こさないうちに、パトリックと別れたかったんだよ……」