あまりさんののっぴきならない事情

「なんて言ったのか、とパトリックが言っているぞ」

「私は日本国民です」

 此処は日本だ。

「罰金で済みますか? 」

 なにをやったんだ……。

「ほんとに例文そのままだな。
 っていうか、海外でなにかやらかす気満々なラインナップだな」

 いやいやいや、とあまりは手を振る。

 そして、振っておいて、また、射殺されるっ? という顔で、慌ててパトリックを見た。

 だから、されるか……。

 こいつの外国の知識は多分に間違っている、と思いながら、そのままパトリックに訳してやると、パトリックはゲラゲラ笑っていた。

「か、海里さん。
 また、なにか喋っておられます。

 なんと?」
とあまりはまた、挙動不審になりながら、自分の腕を握ってきた。

 自分がフランス語を話すたびに、あまりが怯える様もパトリックにはツボらしい。

「貴女のような愉快なお嬢さんに会えて、実に楽しい。
 とても有意義な滞在でした」

 ……そこがもっとも有意義とかどうだ、パトリック、と先程、熱弁を振るっていた社員達を思い起こしながら思う。