あまりさんののっぴきならない事情

 



 あまりが凍り付いている、と思いながら、海里は眺めていた。

 いきなり、訳のわからない活用を言うなよ、と思っていると、なにか話しかけられて、困った風なあまりは、いきなり喋り出した。

「Estis agrable renkonti vin.」

 それを聞いたパトリックが笑って答える。

「Bonan vesperon!」

 ……エスペラント語じゃないか。

 何故、英語が話せないのに、エスペラント語が話せる。

 エスペラント語は何処の国の言葉でもない。

 様々な国の人たちの間で意思の疎通ができるように考えられた、国際補助語だ。

 使う人はあまり多くはないが、パトリックには通じたようだった。

 だが、そのあと、パトリックはフランス語で話し出したので、あまりにはわからなくなってしまったようだった。

「かっ、海里さんっ。
 いや、支社長っ。

 この人、なんとっ!?」
と腕をつかんでくる。

 その手を見下ろしながら、海里は言った。