そうして、着いたのは、本当に山の中だった。
「うーん。
これはないだろう」
タクシーに待ってもらって、その一面の枯れ野原という場所を見る。
「だが、平地なのはいいな。
山を崩さなくていい」
「そうですね。
こんなところには珍しく、段差のない平地ですね」
だから候補に挙がったのだろうが。
「大きな道路が走ってるのもいい」
と言う海里に、
「なんでこんな山の中にこんな道路が?
ゴルフ場なんかかあるようにも見えないですが」
と言うと、
「この辺り出身の大物政治家でも居るんだろうよ」
と海里は言う。
すると、その広い空き地の向こう側に人が見えた。
そういえば、タクシーも止まっている。
「あれ、あの人、さっきのフランス人じゃありません?」
「……名前くらい聞き取れ。
っていうか、よく見えるな。
お前はあれか。
あと二時間くらいしたら人が来るとかいうアフリカの人みたいな視力があるのか」



