あまりさんののっぴきならない事情

 いや、それは、鬼のような社長にどやしつけられたあと、可愛らしい娘にお茶を持ってこられたら、誰でも笑うと思うが。

 ……俺でも笑うぞ。

 そういう出会いの方がよかったな、とちょっと思ってしまった。

 その方が恋が始まりそうだ。

 いやいや、始まりたいわけではないのだが……。

「でも、忙しいときには、お茶なんて煎れてられないっていうのはわかります。

 だから、この二週間の間だけですが、いつでも私におっしゃってくださいね。

 あ、そうだ。
 総務もお忙しそうでしたね。

 なんでしたら、総務のお茶も煎れてさしあげても……」
と言いかけるあまりに、珍しく秋月よりも強く桜田が、やらなくていい、やらなくていい、と手を振る。

 秋月が、
「自ら、薮をつつく必要はないわよ。
 あっちは人数居るんだから、自分たちでうまく回すわよ」
と言っていた。

「はあ、薮ですか……」
とあまりがよくわかっていないように呟き、そこから、また、普通の話に戻っていた。