あまりさんののっぴきならない事情

 




「あらあら、可愛いとこあるじゃないの、支社長」
と小声で秋月が言ってきた。

 一人、席から動かなかった成田は面白くもなく、並んで座るあまりと海里を眺めていた。

 海里は、海里さん、とあまりが呼んだだけで、ふてくれさるのをやめ、いそいそと戻って来て。

 しかも、何処か遠慮がちに、あまりの隣りに座っている。

 ……こいつ、もしかして、あまりのこと、本気なのか?

 こんな海里は初めて見た、と思う。

 常に傲岸不遜な奴なのに。

「お似合いですよねー」
とあまりに見せられたメニューをわざとか仏頂面で眺めている海里を見ながら桜田が呟く。

「そうですね。
 なんで、お見合い断っちゃったんでしょうね、あまりさん」

 寺坂までみんなにつられて、あまりさんになっていた。

 断った理由ねえ。

「……死ぬ程しょうもない理由な気がするよ」
と酒を呑みながら、成田は、ひとり呟いた。

 なんせ、あまりだからな、と。