それこそ最初は、彼女目当てに来てるだろう男子に混じって見てるだけでよかった。
…同じ委員の男に向ける笑みだとかには、ムカついたけど。
それでも行動に移すのは躊躇われて。だらだらと日々は過ぎて。
そんな、4月の終わりの頃だった。
ゆり姉が俺の元へとやって来たのは。
「ねぇ、綾くんって何のために図書室に来てるの〜?」
「ゴホッ」
突然家に押しかけて来ただけでなく両親のいる中で爆弾を落とされ、盛大にむせる。
幸い、両親はテレビに夢中で気づいていないみたいだけど。
「な、なんでって……。俺が図書室に来ちゃ駄目なわけ?」
「ん〜?そうじゃなくて、『毎週金曜日』に本を借りるわけでもなく図書室にいる理由はなんなのかな〜って思っただけ〜」
ニコニコと笑みを浮かべるゆり姉に、ギクリと頬が強張るのがわかった。
「本、借りに来たらいいのに〜。そしたら真琴ちゃんに印押してもらえるかもよ?」
「真琴……」
あの子の名前…真琴って、いうんだ。
口に出した瞬間、胸の奥がぎゅう、とくすぐったくなる。
「やぁだ綾くんたら好きな子の名前も知らないの?」
「な…っ、別に、そんなんじゃ…」
反論しかけて、口籠る。
別に好きじゃない。ただ少し、気になるだけ。
…なのに。
彼女の笑顔を思い出して、また心に靄がかかった。
「…借りたい本なんてない」
ボソリと、呟く。
ゆり姉は「うーん、そうね〜」なんて言って顎に指を添えた後、パチンと指を鳴らした。
「そうだ、いいこと考えた〜」



