【完】金曜日は、八神くんのモノ






「……で、話って何?」

連れてこられた多目的教室で、あたしは八神くんに問う。


……なんの話だろう。
あたしがゆり先生とのアレを見ていたってことは、彼は知らないはずで。

だから、八神くんがあたしに話すことなんて……。


ドキドキしながら、彼の口が開くのを待つ。

廊下の方から聞こえる笑い声が、余計にそれを煽った。


「じゃあ、単刀直入に訊きますけど」

「…うん」


ばくばくと更に心音が高まって、握った手には、もうそろそろ冬なはずなのにうっすらと汗が滲む。

頭も自然と下を向いて、八神くんの上履きだけが目に入る。


なんだろう、何を言われるんだろう。

彼は秘密が多過ぎて何を言われるのか、見当もつかない。



「……どうして、隠してたんですか?」

「え?」


パッと、顔を上げる。
八神くんの瞳はすごく真剣で…でも。

隠してる、って。


なに、を……。

そこまで考えて、息を呑む。


「なんで、それ……」

「……やっぱり。俺に黙ってしたデートは楽しかったですか?
それとも、もう付き合ってます?」

「………っ」


日曜のデートのこと、理彩くらいにしか言ってないのに。
どうして?どこで知ったの?
まさか、見られてた?

どくどくと心臓が鳴って、息が苦しい。


何も言わないあたしに、八神くんは一歩近づく。



「……『なんでもない』って、言ったのに。
先輩の嘘つき。」