「広野さん、広野さん?」

肩をトントンと叩かれて我に返った。


「え?は、はい」

顔を上げると、そこには笹中さんが立っていた。

「笹中さん...」

机のことまだ話してなかった。

「あの、ちょっと...話したいことがあって。ちょっといい?」

笹中さんは困惑した表情で私を見ていた。

何かあったのだろうか…私の胸が緊張でギュッとなる。


「うん…どうしたの?」

きちんと座り直した私の隣に笹中さんが座った。

メガネをかけた笹中さんの横顔をじっと見た。

色の白い、大人しそうな顔立ち。
でも、近くで見ると黒くはっきりとした黒目が、なんとなく意志の強さのようなものを感じさせる人だ。