職員室へ向かう途中で、久保川くんはバスケ部の先輩につかまり連れていかれてしまった。

「ごめん、あとで連絡するから」

肩を抱かれてズンズン歩いていく先輩に引きずられながら、振り返る海晴くん。


「久保川、お前部活さぼって女と密会してんじゃねえよ」


「密会じゃないっすよ」


仲いいんですね…


二人の声が遠くなっていくのをぼんやりと見るしかできなかった。

職員室から担任の船田先生が出てきた。
いつも通り、首からタオルをかけている。小太りで、短い手足はまるでゆるキャラ。

「ふなだっしー」
と、呼ばれている。

本人も気に入っている様子で、笑顔ではいはいと答えている。

「あ、先生?」

私は、ふなだっしーとか呼ぶキャラではないことをちゃんと自覚しているので。

「あれ?どうしたの?広野さん」

「ちょっとお聞きしたいんですけど。あの...最近転校した人って、いますか?」

先生は首をかしげて、私を不思議そうな顔で見た。