「やだ、桜樹!桜樹!」

悲鳴に近い声を上げた。

嘘でしょ…

体が震えだした。

「桜樹?桜樹…!」

呼びかけても、意識がない桜樹の姿に頭の中は真っ白になり、心臓の音が身体中に響き渡る。

「なずなちゃん」

声がする方へ顔を向けると、海晴くんが息を切らして立っていた。


「どうして…?」

海晴くんが偶然にもここに居るというのも不自然なことだった。


「電話、かかってきたんだよ。救急隊員の人から。桜樹のケータイの最終履歴が俺で。ていうか、俺しかなかったって…」

海晴くんも困惑した表情で、

「桜樹は?」

目で桜樹を捜した。


「担架の上、今処置してもらってるみたいなんだけど」

海晴くんは、

「すみません、さっき電話もらった者なんですけど」

そう伝えると、

「おい!桜樹!聞こえるか?」

桜樹に大きな声で話しかけた。


「あ、反応ありました!」

救急隊員の人がバタバタと動く。