俺は漫画家を目指して、田舎から上京してきた。


が、志し半ばのまま貧乏暮らしも底をつき、とうとう道に落ちていたパンを拾う羽目にまでなっていた。


そして、ボロアパートの一室で拾ったパンのカビた部分を摘まみ取り、何かジャムでも残ってないかと空っぽの冷蔵庫に頭を突っ込んでいたところ、パンは人の良さそうな顔を浮かべて喋り出した、という訳だ。



なにぶん、ここしばらくは人間とも話してなかった俺はパンと話す事にさほど抵抗も感じなかった。


カビパンは俺のことを詳しく聞きたがった。

生い立ちや漫画家を目指したきっかけ、普段の生活、天気の話しや軽い世間話まで。