始まりはあの日、俺がカビたパンを拾ったところからだった。




「助けていただき、なんとお礼を申し上げたら良いのやら。あまりこちらの言葉に詳しくないもので……」


助けた?カビパンは喋った。しかも食パンだった。一枚だけ袋に残った食パン。俺は呆気にとられ、ただただカビパンの話しに耳を傾けるしかなかった。



「こちらに到着してすぐに雨に当たってしまいまして、どうもこの国は湿気が多くていけないものですから、応急対策の抗菌用の袋に入ったまでは良かったのですが……あいにく仲間とはぐれてしまいましたところを貴方様にお助けいただいた。とそういう訳でして……」