いろんな気持ちをこめてむぎゅうっと抱きついた。

甘えさせてあげたい、とか思いつつ、これじゃいつも通り、わたしが彼に甘えてしまっている。


よしよしと髪を撫でてくれるあたたかい手を、本当はずっと、手放したくないよ。


「こっちむいて」


おでこのすぐ上くらいに甘い声が降ってきたのといっしょに、頭頂部あたりにちゅっとされる。

顔を上げると、すぐに顎が捕まって、やわらかいキスをした。


「う、なんか……ちゅうされた」

「いつもしてるよ。嫌だった?」

「いやじゃないけど、でも、だって」

「仲直りのちゅうだよ」


どうしようもない大好きがこみ上げて、首に抱きついて、今度はわたしからちゅうした。

ごめんねのちゅう。
大好きのちゅう。

それから、ありがとうのちゅう。


ちゅうってすごいね。

ただくちびるが触れるだけなのに、こんなにも特別なんだから。


「よかった」


右手だけでわたしを自分の首元に引き寄せながら、彼が安堵したように言った。


「沖縄行き、キャンセルしないといけないかと思った」


ジョークみたいに言うので思わずふふっと笑ってしまう。


「もうあと3週間だね! あっというまだあ」

「準備してる?」

「へへ、ぜんぜん」

「ダメじゃん」


青い海と白いビーチを想像したらどきどきした。

ずっと行きたいと思っていた場所。

いけちゃんに、どうしてもと無理を言って、夏休みをもらったよ。