「あのコに何があったのか…
すべてお話します―――」
父親はそう言って
1度、深呼吸をし酒を飲むと
過去の出来事を
話始めた。
「アレは…
ヒメの大学卒業の日―――」
ヒメが大学を卒業する日
大雨と雷の注意報が出ているほど
強い豪雨だった。
母が駐車場から
雨宿りしているヒメと姉の元に
車を横付けしようと走り出したが。
視界も悪かったからか
急に飛び出してきた子供に
気付いた時には遅く。
思わず急ハンドルしてしまい
母が運転する車が
スリップ事故を起こし
ヒメ達に突っ込んできた。
姉が咄嗟にヒメを庇い
そして、巻き込まれた―――
現実を直視するのに
それほど時間は掛からなかった。
目の前の“ソレ”は
姿形がなく
目を覆うほど無残なモノ。
それがヒメにとって
生まれて初めて
“死”を目の当たりにした瞬間だった。
呆然と立ちすくみ
母は泣き崩れるしかなく
それなのにヒメは
なぜか涙が出ない。
「あのコは…
大きな衝撃のせいで
泣く事が出来なくなってしまった…」
それはある意味“危険”を意味していた。
本人が気付かないところで
心のダメージが酷くなっているという事に。


