「それなら
改めてアポを取ればいい?」
そういう問題ではないのだが。
「うーん…
聞いてみないと。
だけど、会ってどうするの?」
「挨拶だけだから」
“挨拶だけ”で
そんな大荷物を持って
会社に現れるモノなのかと
ヒメは父親の行動が
不思議で仕方なかった。
しかし
父親には目的があった。
大切な娘のため―――
「神崎?」
ふと、後ろから
聞き覚えてある声に
ハッと振り返った。
噂をすれば
ナツメが立っているではないか。
「社長ッ」
「いないから捜した。
…来客?」
こんなタイミングで
会わせる事になると思わなかっただけに
溜め息が出てしまう。
「社長さんですか!
初めまして、ヒメの父です!」
ナツメと目が合うなり
ソファから勢い良く立ち上がる父。
胸ポケットから名刺を取り出すと
間髪入れずにナツメに差し出した。
「え、あ、
神崎のお父さん…?」
ただただビックリしているナツメ。
それもそうだ。
まさか会社に父親が現れて
急に挨拶されるとは
予想さえしない展開なのだから。
しかし
なぜか―――


