「そんなに畏まらなくて
大丈夫ですよ。
こんな素敵な秘書さんがいて
新藤社長が羨ましいな」
「…いえ、そんな事は…」
社交辞令だと理解していても
なんとも返答しづらい発言に
ヒメは顔が引きつってしまう。
「もし良ければ神崎さん。
相席、して頂けませんか?」
そう言ってスバルは
自分が座っている席の隣のイスを引き
『どうぞ』と声を掛けた。
「…はい。
失礼します」
次期社長になる人と
2人きりになるなんて
思ってもみなかったが
“ナツメのためにも
しっかりしないといけない“と
秘書らしく振る舞う事だけを
考えた。
「はい、どうぞ」
「すみません…
ありがとうございます…」
スバルが会場内から貰ってきた
赤ワインを頂き
まさかの乾杯。
静かな夜の
綺麗に輝く満月をバックに
グラスを合わせた―――
「ねぇ、聞いてもいいかな?」
「はい」
急に質問される度に
一瞬驚きながら冷静に声を聞く。
「どうして新藤社長の秘書を?」
「それは…」
出逢いは
秘書とまったく関係ない面接だったため
またも応えづらい質問に頭を悩ませる。


