仕事を終えて自宅に帰ってから携帯で『有坂行直』と検索したら、簡単に『プロ棋士』と写真付きで出てきた。
むしろ『有坂ゆ』まで入力した時点で、予測選択でフルネームが上がった。
だけど、世の中に彼氏の名前で検索する人なんてどれくらいいるのだろう。
今はSNSがあるから結構いるのかもしれない。
でも私はしなかった。詮索するようなことはしたくないし、そもそもそんなに直に対して興味がなかったから。

『有坂行直』のページには、私の知らないことばかりが書いてあった。
四月十日生まれ、東京都出身、奥沼政重七段門下。
どうやら大学には進学していないらしい。
それもそのはず、高校三年になる時にプロ入りしているのだから。
棋歴には五歳のときにおじいちゃんから将棋を教わったこと、小学生将棋名人戦で優勝したこと、小学校五年生のときに奨励会入りしたことなどが書かれている。

おじちゃんが言っていたプロ棋士七人に連勝した神宮寺リゾート杯のこともあった。
棋風はオールラウンダー?
対局内容のエピソードがいくつか書いてあるけど、読んでも私には理解できない。

小学五年 6級で奨励会入会
中学二年 初段
高校一年 三段
高校三年 四段
十八歳 五段(C級1組昇級)
二十歳 六段(王座タイトル挑戦)
二十一歳 B級2組昇級
二十四歳 B級1組昇級、七段昇段

十年以上時間がかかる場合もあるし、上がれずに辞める人もたくさんいると聞いた昇段。
ネットで見る直の昇段履歴は、エスカレーターに乗っているかのように順調そのものだった。
黙っていても自動的に上がれるんじゃないかと錯覚しそうなくらい。
他には将棋の研究書らしき著書も一冊出しているみたいだった。