「案ずるより産むが易し」って言った人は、男だったんじゃないかな?
絶対「案ずる」方が楽だからああああああ!!!!

……痛い。
予想を遙かに上回って痛い。
出産した友達は「痛かったよ~」なんて笑顔で言うから、もっと軽いと思ってた。
笑えないから!
終わったら私は泣きながら訴えようと思う、この痛みの辛さを!
生理痛がきつい時は「生理痛で死んだ人はいないはず!」って自分を励ましてたけど、出産で死んだ人ってたくさんいるんだよね。
本当に死ぬかもおおおおおお!!!!

何度目かの山を越えぐったりしている私の頭の上で、先生と助産師さんのなごやかな声が行き交う。

「もう少し間隔が短くならないとなー」

「今……まだ10分ですね。あ、寝てる」

「これから本番なんだから、寝られるだけ寝て体力保ってもらった方がいい」

寝てません!
あまりの痛みの後だったからぐったりして声も出せないだけです!
……という言葉は、それこそ体力がもったいないので飲み込んだ。
そんなことより大事なことがあるので、突っ伏していた枕から少しだけ顔をズラし、か細い声を助産師さんに投げる。

「……母に……名人戦……」

事前に状況を説明しておいたため、助産師さんは分娩室の外にいる母の元へ行ってくれた。

「『まだどっちともわからない』そうですよ」

聞くだけ聞くと返事をすることもできず、私は再び顔を枕に沈めた。
直、ごめん。
私も頑張るから許して。