かつお君が死んだ。
ううん、本当の名前は中田勝男(まさお)くん。
僕だけが中田勝男くんの事を“かつお君”と呼んでいたんだ。

僕の名前は将太。沢田将太。

小学校に入学する前に入院した病院で出会ったかつお君は、同じ町の同じ年の男の子だった。それだけで仲良くなれたんだ。

かつお君は、同じ学校へ入学してクラスも同じになれたのに、心臓が悪くて生まれた頃からずーっと入院と退院を繰り返していて、学校には数える程しか出席できなかったし、出席しても体育の授業には出られず、休み時間も本ばかり読んでいたので、僕以外の友達はいなかった。

学校でのかつお君は、無口で、学校に出席しても保健室にばかり通う子で、同じクラスの子たちは、クラスのガキ大将を中心に「お顔、真っ青、まさおくーん。」と言っては彼をからかっていた。

かつお君はそれが原因で『自分の名前なんて大嫌いだ!だから、もう、そんな名前でボクを呼ばないで。』と僕に泣きながら言ったことがあった。だから僕は、早く病気が治って元気になって欲しいなと思って、「まさおって、“かつお”とも読めるんだって。だから今度からは病気に勝てる“かつお君”って呼ぶよ!」と彼を励ました。

その日から僕は彼をかつお君と呼ぶようになったんだ。

クラスの皆は知らないけど、かつお君はたくさん本を読んでいるので、小学生なのに大人の人たち以上に世界の事を何でもよく知っていて、頭が良くて、学校には殆ど来ないのに、テストをすれば100点満点ばかり。それに、とても不思議な力を持っていたんだ。

僕の家が病院からとても近かったから、かつお君にプリントを届けに行ったりするのはいつも僕の役割って決まっていた。