結局、俺が飲みたいこともあり、俺らは自販機に寄った。


「なんか飲む?」


「大翔のもらう。」


俺のかい。まぁいいけど。


「ん。」


とりあえず買ったばかりのお茶を、俺が飲んだあとじゃ嫌かなと、先に心優に飲ませることにした。

まぁ、間接キス的なことはすでに何回かあるけど。


「ありがと。」


「おう。」


と、受け取り俺もとりあえず一口。


「ちょいあっちいこ。」


で、すぐ人の多いここを離れて
本館裏、職員室の窓の下に座って隠れることにした。


「なに?どうしたの」


「ん?話の続き。」


本当に単純な俺だけど
心優が俺にも智樹に話したことを話してくれたから、俺の機嫌も元通りだ。


「俺の母さんが死んだときさ、俺ガキだったし、反抗期入りたてくらいで。
夏休み、みんなどっか家族で旅行行くのに俺んちはどこもいかなくて。
母さんはもう末期だったから当たり前なんだけどさ。
それを受け入れられなくて。
で、夏休み友達みんなが旅行とか、親戚の家に行ってて俺と遊んでくれるやつが誰もいない日があってさ
その日、結局夕方に父さんと病院に行ったんだけど、その時母さんに言っちゃったんだよ。
『母さんが病気になるのが悪いんだ』って。
『母さんが病気にならなきゃ俺だってどっか行けるのに』って。」


「……そうなんだ。」


「その時、母さんは俺に謝ることしかしなくて、父さんもそんなこと言った俺を怒ることもしなかった。
その日、俺の機嫌が悪いこともあってすぐに帰ったんだけどさ
その夜に母さんが危険な状態になって、すぐに父さんと行ったけどもう意識はなくて
……そのまま、朝方心停止。

俺は母さんに謝ることもできずに、ここまで育ったわけよ。」


「……そっか」


「俺その事すげー後悔してたくせに、父さんも末期ガンだって知ったとき、親戚の家に引き取られるのが嫌でさ。
今度は父さんを責めたんだよ。
『父さんのせいで』なんて言っちゃってさ。
それを謝ることもできないまま、父さんも死んでった。

それからかな。
明日、何が起こるかなんてわからないんだな、って。
普通に会話できてても、明日にはもう死んでるかもしれないって
そんなこと考えるようになった。

俺も心優と一緒。
謝ることも償うこともできなくて、自分の事をまだ許してもいない。

だけど、やっぱ今日がこんなに平和でも明日のことは見えないから
今は毎日を楽しもうって生きてる。」


誰も知ることのない明日のためにも、俺は今日を必死に生きるだけ。
俺も心優もちゃんとわかってる。
大事な人を失ったからこそ、いつか必ず終わりが来ることをちゃんとわかってるから。


「だから心優もさ、死んだように生きるのやめたら?
今せっかく生かせてもらって、平和な毎日過ごさせてもらってんだからさ。」