それからは沈黙だったり、当たり障りのない会話をして、特に楽しくもない弁当タイムはいつもより長く感じた。


「教室戻るか。」


「うん。」


だからか、昨日よりも早く空き教室を出た。
昨日繋がれた手も今日はない。

所詮俺はなんちゃって彼氏で、そんな身分なくせにいつの間にかこいつを本気に好きになってて

俺だけがこいつに翻弄されてんのが嫌で…俺が勝手に好きになっただけだけど
こいつにとっては相談すらできない相手で、俺はその程度な身分なんだったと改めて知って

俺は一人、虚しくなっていた。


「私、恋愛する資格あるのかな~って思ってただけ。」


そんな虚しくなっていた俺に、歩きながら心優が話しかけた。


「資格?なんで?」


「だって愛梨は私のせいで自殺して、美奈子まで苦しんでる。
それなのに私だけここで平和に過ごして、大翔の彼女までって。」


……なんだ、そんなことか。


「資格な。それはわかんねーけど、でも
今より前に進みたいなら、結局心優自身が乗り越えなきゃ無理じゃね?
心優だけじゃねーし、恋愛だけのことじゃねーけどさ
今より前に進むには戦うしかないと俺は思ってるね。」


「戦うってなにと?」


「今の自分と。」


「…大翔ってたまに似合わないこと言うよね。」


「傷つけられたことは時間が解決してくれんのに、傷つけたことは自分自身が許してやるしかないんだよ。
自分で許せるようになるために、自分と戦うしかない。」


「……どうしてそう思うの?」


「俺もさ、もう言うことができないごめんなさいを抱えてんだよね。
その頃俺はガキだったけど、俺自身、まだあの頃の俺を許したわけじゃないから。」


…いや、許そうとも思ってない。
その代わり、一生これを背負っていくから俺は俺なりに、ちゃんと生きていこうって思ってるんだよ。


「……なにか、あったの?」


「大したことじゃないよ。」