「に、仁科さん!俺河合智樹!よろしく!」


壁に寄りかかり、智樹と話しやすい体勢をとっているけど、智樹は完全に転校生に顔が向いている。


「で、こいつは七瀬大翔(ななせ だいと)。
こいつと目を合わせると妊娠するから気を付けてね!」


なにも喋らない
智樹の方も見ない
表情も変えない

そんな仁科は、智樹のその言葉に俺の方をチラッと見た。
その目は冷たく、鋭く…軽蔑したような目をしていた。


「……なに。」


俺がそう問いても、仁科はなにも答えずに担任の方へと視線を戻した。


……なんつーか、
よろしく、とかねーわけ?

聖凛だったんだろ?
挨拶は基本じゃねーのかよ。
清く、正しく、美しく、じゃねーのかよ。


……あ、でも転校してきたってことは問題児だったのか?
だから聖凛にいられなくなったのか?
でもなきゃ普通高校で転校なんてあり得ないよな。

しかもこんな、レベルも高くない公立高校に。


「じゃあ七瀬、宿題集めて俺のところ持ってこいな。
これ名簿。出したやつはチェックして、一緒に持ってきて。
宿題出したやつから帰ってよし。」


「は?ちょ、また俺?」


「それで許してやるってんだから俺って優しいよな。」


担任はそういって、笑顔で教室を出ていった。


「……智樹も手伝うよな?」


「えー、俺~?」


「ついでに仁科も連れてこいよ。
案内するんだろ。」


「そ、そうか!わかった!」


持つべきものは親友だな、うん。