「ん、ちゃんと拭かないと風邪引くよ?」


心優はそういって俺にタオルを差し出した。


「…いやでも人ので汗は拭けねーよ。」


「いいよ、あげる。
風邪引いたら嫌だし、ちゃんと拭きなよ。」


「……サンキュ。」


心優は引く気配はなかったから、素直にそれを受け取った。
こんな話をしてる場合でもないしな。


「それで、話ってなに?」


「え、あぁ…」


そ、そうだった。
やべ、なんか今更緊張が…


「あの…」


「ふふ、大翔らしくないね」


そうやって笑う心優はやっぱり可愛くて、俺の胸を高鳴らせる。

……おかげで、余計に緊張する。


「あの、えっと…」


頑張れ、俺。
頑張るんだ、俺。


「……じゃあ、私から先に言っていい?」


「え?なにを?」


「私が別れを切り出したわけを。
あの日、何で私が別れようと思ったかを。」


「あぁ…なんで?」


「ふふ、それはね、大翔」


ずっと窓の外を見ていた心優は、笑ってこちらを見た。
俺の方に一歩踏み出して、俺の目を見つめて


「本当は大翔のこと、大好きだったからだよ。」


そう言った。優しく微笑みながら。