「……なんか、やっぱいいな。
違うな、生きてると。」


「え?なにが?」


窓の景色が変わり、通り過ぎ行く景色を流れるように見ながら、俺はそんなことをポツリと落とした。


「…もうきっと会うことはないけど
それでも生きて別れるのは大して寂しくねーなって。
生きてればいつかまた会うかもしれないもんな。」


俺らしくない。
だけど、永遠の別れというものを知ってる心優ならわかってくれる気がした。


「……そうだね。」


絶望感しか知らなかった。
別れというものはそういうものだと思ってた。

…でも、違う永遠の別れってのもあるんだなって
そこから得られるものもあるんだなって


「…あー、帰りたくねーっ」


「そうだね。」


終わる。
もうすぐ終わる。

こうやって、心優のとなりにいられるのもあと少しで、俺にはまた『別れ』が訪れる。

永遠になるのか、ならないのかはわからない別れが俺らを待ち受けている。
未来なんてわからないから、その現実だけが俺を締め付ける。


「…明日はなにがあんのかな」


思わずそう溢れた俺の言葉は


「わかんないよ。でもきっとまた良いことがあるよ。」


ちゃんと、心優が拾ってくれた。


「なんで?」


「明日がそう言ってる気がする。
今日の空もとってもキレイだから。」


「……なるほどな」


「ねぇ、大翔って将来の夢なに?」


「はぁ?」


「一回くらい考えたことあるんでしょ?」


「将来の夢な~
……あんま考えたことねーな」


「えー?もう進路の話出てるのにー?」


「そういう心優はあんのかよ。」


「私?私はあるよ、もちろん。
なんならそのために留学するようなもんだもん。」


「え、そうなの?なにになんの?」


「内緒!
まぁ仕事以外のことならやっぱり恋愛して、結婚して、子供をいっぱい愛してあげるの。

私はあんまり愛されなかったから、だから自分の子供はいっぱい愛したい。
狭い家で、いつも家族で食卓囲むようなそんな普通の家族を作りたいなって」


「……なるほどな
それはちょっとわかるわ。

すっげーうざがられるような親になりたいわ
俺も。」


「ふふ、そうだよね。
大翔はなりそうだよ。」


「……じゃっかんバカにしてね?」