そしてついた遠見番所跡。
少し小高くなってるここは、360度確かに海が見渡せた。
「あー、なんか晴れてたらもっといい景色なんかな」
「はは、そうかもね。
でもやっぱり綺麗だよ。」
そういう心優の横顔はきれいで、可愛くて
少し、儚かった。
「……あのさ、大翔」
「ん?」
「…あれ、雨?」
「え?」
「雨っ、雨だよ!」
本当だ!なんて言う暇もなく急に強めの雨が降ってきて、俺らは急いでここを降りて屋根の下へ走った。
そりゃもう全速力で…なんてことは心優がいるからできないけど、俺は自然と心優の手を握りしめて走っていた。
無意識に、いつの間にか握っていたんだ。
「あ、ありがと」
だけど、そんな手も屋根の下に入ればすぐに離される。
……そんなもんだよな。
に、しても
「めっちゃ濡れたな」
「タオルある?」
「あるある。」
とりあえず俺らはリュックからタオルを取り出して全身を拭く。
まさかこんな急に降られるなんてな。
まぁあんだけ黒い雲が来てたから降るかもって思ってたけどさ…
……ん?
「…寒い?」
「あ、んー…ちょっとね。
濡れたし、風もあるし薄着だから」
心優の方を見れば、寒そうにしていたから
俺はすかさずカバンからカーディガンを取り出した。
「ん、着てろよ。」
「え、でも…」
「俺は寒くねーし。
風邪引いたら困るじゃん。」
「…ありがと。じゃあちょっと借りるね。」
「おう。」


