それから俺は教室に行く気力もなく、この空き教室で美術の宿題をやっていた。


ここからの景色はだいすきだ。
夕方になれば眩しすぎる西日が街を照らす。
この薄暗い教室を照らす。

そんな景色をこの少しだけ高いここから見るのが好きだ。


とはいえ、街並みを描くのは面倒だから、この照らされた教室を描くだけだけど。

心優も、目に見えたものを描いただけって言ってたし、俺もよく目にする好きな光景を頭の中に広げて描いていった。


「ま、こんなもんか。」


そんな俺の好きな景色を妥協することもなく描き上げ、筆をポチョン、とバケツの中に投げ入れ、俺の絵は完成した。

さすが俺。なかなか。


……なんて、誰も誉めてくれないから、自分で誉めてみた。


「さてと、教室行くかな。」


毎日毎日サボってたら卒業できねーし、2時間目から行ってみるか。
金曜日なんて午前中全部サボってたしな、俺。


……心優もいる、けど
彼氏じゃなくなった俺は今まで通りなんて接することはできない。


友達に、戻らなければならない。のに……

━━俺、前まで心優とどうやって過ごしてたんだろ。



よくよく考えれば俺らが付き合う前は学校では一言も喋ってこなかった。

どうやって友達として接すればいいのか、俺にはわからなくって……


「お、大翔おせーぞー」


「今日は早い方だろ。」


教室についても、心優の顔もみることはなくて、話しかけることもできなくて
いつも通り、俺は窓枠に腕を乗せて項垂れていた。