「本当に付き合ってるわ。」


気づけばもう俺は美空の隣まで歩いてきていて、美空のことを見ることもなく、そう返事をした。


「だって大翔って、私と付き合ってるときはいつも手繋いでくれたじゃん?
私のことを好きだった頃はもっとベタベタの甘い大翔だったのに
今じゃそれすらないじゃない?」


「俺だってもう、あの頃の俺とはちげーんだよ。
お前が知ってる俺なんてもうこれっぽっちも残ってねーよ。」


「それはどうかな。
智樹はなんにも変わってないって言ってたけどね。」


こいつのしゃべり方が本当に昔と変わらなくて、それがまた腹立たしい。
昔が甦ってくる。

……にしても、智樹はなにをペラペラと話してんだよ。


「私、大翔に用があってきたんだよね。
その子が本当に彼女なら身を引いてあげてもいいけど、彼女じゃないなら、ちょっと時間、いい?」


「彼女だっつってんじゃん。」


「口ではなんとでも言えるし
んー…あ、じゃあキスしてみてよ。今、ここで。」


「は?」


……こいつ、なにを言い出してんだよ…


「それみたら帰るからさー」


「いったいなんのためにお前の前でそんなことしなきゃいけないのか理解できない。」


「じゃあ今からちょっと付き合って。」


「無理。」


「じゃあキスしてみてよ。」


……ラチがあかねぇ。


「心優、行こ。」


もう、こいつには付き合ってられねぇ。
そもそも、俺とこいつはもう終わった仲だ。


「それならまた私来るけど、平気?」


……こいつ…