「それがさ。江藤さんって男に目がないんでしょ?それで奏穂も嫌気がさしたんじゃないかって噂になっててさぁ」
「離れたくなる気持ちも分かるわーって話。実際どーなの?」
あたしの中で何かがプツンと切れるのを感じた。
「里歩たちに。…芽依の何が分かるの?!確かに今、あたしたちはうまくいってないよ。だけどそれは芽依が悪いわけじゃない!噂なんて知らないよ…。でも芽依はそんな子じゃない!分かったように言わないでっ…‼」
許せなかった。芽依の事を何も知らない子に悪く言われるなんて。
だって芽依はあんなにいい子なのに。今だってきっと、何かがすれ違ってるだけ。
…あたしはそう信じてる。
「ご、ごめん奏穂。私たち、ちょっと口出しすぎたよね…っ」
「奏穂がそんなに怒るなんて思わなかった。本当、ごめんね。気にしないで…じ、じゃあまた明日…!」
里歩たちは颯爽と教室を出て行った。
ちょっと言いすぎちゃったかな…。
けどまさか、そんな噂が飛び交ってたなんて…
─────ガタン
立ち尽くすあたしの耳に物音が聞こえた。
振り返ってみるとそこには、今走り出したばかりの芽依の姿があって
「芽依!待って…っ!!」
あたしはその後を必死で追いかけた。
────────パシッ
玄関へ続く渡り廊下の途中、やっとの事であたしは芽依の腕を掴んだ。
「やっと…おい、ついた……っ」
「は、なして…っ!離してよ…奏穂ぉ…っっ」
「ううん。あたしも、ごめんね…」
芽依の苦しみに、
気づいてあげられなくてごめん────────



