「…あった」
お目当てのものを手に取り、帰ろうとしたあたしを
「瀬崎…?まだ残っていたのか。暇なら少し手伝え」
運悪く先生の声が呼び止めた。
「はい…分かりました……」
特に用事のないあたしは従わざるを得なくて、荷物を置いてしぶしぶ先生についていった。
「それで…手伝いって何をすればいいんですか?」
「あー、その15種類のプリントを1枚ずつ取って資料を40部作ってくれ」
…40部?!すぐ終わんないじゃん…。帰るの何時になるんだろ…
そんな不満を胸に抱えながらもあたしは作業に取り掛かった。
──────作業に没頭すること1時間半。
「お、終わった…」
何とか手伝いを終えたあたしは荷物を取りに教室へ向かう。
廊下は落ちてきた夕日に照らされ、赤く染まっていた。
「あ、噂をすれば奏穂じゃん!」
教室に着くとクラスメートで陸上部のマネージャー2人が部活を終えたのか、おしゃべりをしていた。
「部活お疲れ様。どうかしたの?」
今''噂をすれば''って言ってたよね。何かあったのかな…?
「いや、大した事じゃないんだけどさー。今、奏穂って江藤さんと喧嘩中?」
「喧嘩中ってわけじゃないけど…少しうまくいってなくて。それがどうかした?」
芽依の事を''江藤さん''と呼ぶクラスメート。
社交的に見える芽依は、実はあたしたち以外とはまるで交流がない。
中学の時からそうだった。



