今度はあたしが海叶の背中を押す番。
「…確かに俺は、今でもサッカー超好きだよ。けど…本当に平気なのか?俺はサッカーよりもお前が大切だから。心配なんだよ…」
海叶…。
「ありがとう。今まで沢山心配かけてごめん…。あたしも海叶が大切だよ?だからこそ、諦めて欲しくない」
こんなあたしの事をずっとずっと大切に思ってくれて。
─────本当にありがとう。
「奏穂…分かった。今日顧問の先生んとこ行ってみるよ」
「…うん」
あたしは少しずつ前に進むから。
だから海叶もあたしのために、大好きなものを犠牲にするなんてもうしないで。
「あれ。今日は2人とも早いね。おはよう」
「おはよっ!海叶、奏穂っ」
いつもより早く学校に着いたあたしと海叶は、珍しく朝練終わりの莉玖翔と空羽を迎える形になった。
やっぱりいいな…空羽も揃っての5人。
そんな些細な事が無性に嬉しかった。
「今日は少し早く家を出たから。おはよう、2人とも」
「はよ」
後はここに芽依が来るだけ。
…何もありませんように。この間のが、何かの間違いでありますように。
ただただ、それだけを願った。
でも…
「あっ芽依‼おはよ!」
「………おはよ」
─────現実は、そう甘くはなかった。
まるであたしなんか見えてないとでも言うように、颯爽と席につく。
そして芽依は何やら分厚い参考書を開き、勉強を始めた。
''話しかけるな''とでも言うように。
あたしたちはただ茫然と、その姿を見つめていた。
──────お昼休み。



