「あるよ、あたしにはある。あたしは小6の時。
────────親友を亡くしてるの。救えなかった、救ってあげられなかった大事な友達。
そしてその親友にも、誰にも言えないヒミツがあった」
知らなかった奏穂の過去に、俺は目を見開いた。
そんな…奏穂にそんなヒミツがあったなんて思いもしなかった。
「奏穂…。…俺にもあったよ、ヒミツ。俺の場合は皆に対してじゃねーけど…ずっと一緒だった奏穂に隠してた事があった」
俺の目を真っすぐに見て、海叶はそう言った。
海叶が奏穂にヒミツ…?いつもあんなに一緒にいるのに……?
「ヒミツなんて大した事じゃない。誰にだって事情がある。だから…謝る事なんてないんだ、空羽」
莉玖翔は優しくそう言った。
「空羽、本当は野球が好きなんだってね。緋里さんに聞いたよ」
「お父さんたちがいなくなって俺は自然と野球も辞めた。中学校に入っても、どうしても野球だけは出来なかった。野球をするとお父さんを思い出しそうで…孤独を突きつけられそうで怖かったんだ。だから莉玖翔が入るって言ってたテニス部に俺も入った」
さっきまで口にするのも辛かったお父さんたちの事が自分でも驚くほどスラスラと口から出てくる。
「そっか…そうだったんだね」
「ヒミツにしたかったわけじゃないんだ…両親の事。だけど言葉にすると失った悲しみを思い出しそうで怖かった。皆に気を遣ってほしくなかった。そう思ったら…言えなくなっちゃって。その事に後ろめたさを感じてた…」
「…親友だからって何でも話す必要なんてない。ただ…辛いと思った時、悲しいと思った時、頼れる存在にあたしはなりたい。あたしはまだ空羽としたい事、話したい事が沢山ある。一緒にいたいよ。だから…──────帰ろう?空羽…」
こんな俺でもまだ、奏穂たちの事を親友だって。そう言っていいのかな…?



