冬恋~さいごの贈り物~



「どうしてもこうしてもないよ…っ。空羽を、迎えに来たんだよ」



奏穂が涙をこぼしてそう言うから。


俺もこみ上げる涙を抑えることが出来なかった。



「…無事でよかった。心配したんだからな」



奏穂の後ろでは莉玖翔が



「くう…くうのバカぁぁぁぁぁぁ」



芽依が



「連絡ぐらいしろよ。…親友だろーが」



海叶が。


涙を流していた。



「…みんな…ごめん…っ」



「最初はっ…待ってようって思ってた。だけど不安で…空羽に何かあったらって思うといてもたってもいられなくなったの…」



「空羽がいなくなって1カ月。ずっと近くにいたのに…気づいてあげられなくてごめんな」



そっか…もう1カ月も経ってたんだ……。



「莉玖翔…謝んないでよ。謝るのは俺の方。俺…ずっと皆に隠してた事があるんだ……」



言う。きっと今しかないから…。


そう思って重たい口を開こうとした時



「…空羽…無理して話さなくていい。それに空羽の事は、緋里さんに全部聞いたから…。勝手に聞いちゃってごめん」



奏穂が先に声を発した。



「ううん…。そっか、緋里姉ちゃんが……」



緋里姉ちゃんはおばあちゃんちの隣の旅館の若女将をしている2つ上のお姉さん。


俺がおばあちゃんちに引っ越して少し経った頃、うちを訪ねてきた緋里姉ちゃんと出会った。


最初は歳も近いし、ただよく遊んでいただけだったんだけど…小5の時、弱い自分を見破られちゃって。


それからはどんな些細な事でも緋里姉ちゃんに相談するようになった。


緋里姉ちゃんは唯一俺の本当の思いを、俺のヒミツを話してた人。


本当に感謝してる。


血の繋がりなんて全くないけど、お姉ちゃんがいたらこんな感じなのかなって。