【空羽side】
病室をでた俺の足は昔住んでた町''桜町''に自然と向かう。
俺が生まれ育った町。
──────沢山の思い出が詰まった場所。
中でも思い出深い小さな橋の手すりの上に俺は腰を下ろした。
橋の下を流れる川の水面には
春には桜が
夏には沢山の緑が
秋には紅葉が
冬には降ってくる雪が
姿カタチを変えず綺麗に反射して映る。
俺たち家族はここで
春には花見をして
夏にはここで打ちあがる花火を見て
秋にはお父さんと飛び回るトンボを追いかけて
冬にはかまくらや雪だるまを作った。
ここには沢山の思い出と俺たちの成長記録が詰まってる。
────────お母さん、お父さん…。今もどこかで俺の事見守ってくれてる…?
俺、もう高校1年生になったよ。…7年も、経ったんだね。
今…おばあちゃんが大変なんだ…
目を、覚ましてくれないんだ…。
おばあちゃんは今の俺にとって唯一の家族だから。
だから…
おばあちゃんを助けて─────────────────
水面に映る自分の姿を見る。
その姿は成長しているはずなのに、とても小さく見えた。
ひとりぼっちは嫌だ。いっそのこと、ここからいなくなってしまえば…?
そんな馬鹿なことを考えた時だった。
「─────────空羽…っ」
聞こえるはずのない声が俺の名を叫んだ。
まさか…どうしてここに……?
おそるおそる呼ばれた方に視線を向けるとそこには
─────────俺の大好きな4人がいた。
「…奏穂、みんな……どうして?」



