『そして空羽くんが中学校に入学してからは、いつもいつも会話に出てくる子たちがいた。それが────あなたたち。皆の話をしている空羽くんは本当に楽しそうだった。自慢の親友だって言ってたよ』
緋里さんに話をする空羽の姿がなんとなく分かるような気がした。
『だけど両親を失った悲しみは消えなくて。ヒミツにしたいわけじゃないけど話せないって空羽くん言ってた。だから…彼を責めないであげてね』
『責めるなんて…そんなことするつもりは最初からありませんっ。あたしたちはただ…空羽に会いたくて……』
『空羽は今、どこにいるんですか』
ここに来て初めて海叶が口を開いた。
『そうだね。それを聞くために来たんだもんね。余計な話をしてごめん』
『いや、そんなつもりじゃなくて…。俺は今の話、聞けてよかったって思ってるから。空羽は絶対に話せねーと思うし』
『うん、そうだね。俺もそう思うよ』
『空羽くんの言ってた通り、いい人ばっかりだね。空羽くんは今…
──────隣の県にいる。空羽くんの生まれ育った町に、彼はいると思うよ』
その言葉にあたしたちは顔を見合わせた。
そんなあたしたちの様子を見て、緋里さんは言葉を続けた。
『1カ月前、空羽くんの育て親だったさえ子さんが急に倒れて病院に運ばれちゃったの。それを聞いた空羽くんもすぐに後を追って行っちゃった。当然だよね、空羽くんにとってさえ子さんは唯一の家族だから…』
『でも、どうして隣の県まで────────────』
『その病院がね、さえ子さんの行きつけらしくて。後で聞いた話によるとどうやら空羽くんのおじに当たる人がそこのお医者さんらしいの』
空羽は今、一体どんな気持ちでいるんだろう。



