『分かりました』
そう返事をすると女性…緋里(アカリ)さんはあたしたちを個室へ案内してくれる。
『皆さん、ゆっくりしていってくださいね』
女将さんらしきその人は軽く会釈をするとその場を去った。
『じゃ、みんなどうぞ』
『失礼します…』
促されるまま''梅の間''に足を踏み入れた。
『名前、名乗ってなくてごめんね。私は久城 緋里(クジョウ アカリ)。ついでに言うとさっきの女将は私の母で久城 雪枝(クジョウ ユキエ)って言うの』
あたしたちが座ったことを確認すると緋里さんは話し始めた。
『こちらこそ、名前も名乗らずすいません。俺から順に得田 莉玖翔、江藤 芽依、瀬崎 奏穂、室沢 海叶です』
それに応えるように莉玖翔が全員の名前を述べていく。
『りくとくん、めいちゃん、かなほちゃん、かいとくん。…やっぱりあなたたちだったんだね』
『…と、言いますと?』
何かを知っている様子の緋里さんに聞き返すと
『空羽くんの親友だよね?そっか…あなたたちが…』
あっさりそう答えてくれた。
訳が分からないあたしたちに緋里さんは少しずつ空羽の事を話し始めた。
『空羽くんから聞いてた、大事で大好きな親友がいるんだって。空羽くんがこの町にやってきたのは彼が小3の頃。
夏休みが明けて少し経ってからだった…────────────』
それから聞いた空羽の話はあたしたちが想像もしていなかったことで、言葉を失った。
空羽がここに越してきた頃、夜になるといつも隣の嶋名さえ子さんの家からすすり泣く声が聞こえていたらしい。



