俺は一生懸命その人にお父さんたちがいないことを伝えた。
『キミのお父さんとお母さんがいないんだね。俺たちが探すからキミは安全なところに行こう。危ないから』
その人に全てを委ね、俺は崖を上がり救急隊の人の元へ預けられた。
『この子の車のようです。怪我をしているようなので手当てをお願いします』
『分かりました。僕、あっちに行こうか』
言われるがまま、俺は手当てをしてもらい救急車の中に腰かけた。
お父さん…お母さん…無事でいて……。
俺はただただ2人の無事を祈った。
外では消火作業を終えたのか、救急隊の人と消防隊の人の話し声がかすかに聞こえる。
お父さんとお母さんはいたのかな…。
不安で小さくうずくまる俺の元に先ほどの消防隊員がやってきた。
『キミのお父さんとお母さんは見つかったよ』
『…本当⁈』
奇跡だと思った。だけど…
『ただ…もう息をしていない。生きることは出来なくなってしまったんだ…』
────────────俺の祈りは届かなかった。
聞けばやはり2人は車の中に取り残されていたらしく。
落ちた衝撃で身動きが取れないまま引火したのだろうと、消防隊の人は俺にそう説明してくれた。
『助けてあげられなくてごめんな…坊や』
小3の俺には何がなんだか分からなくて。
ただ、お父さんたちが死んでしまったことだけが深く頭に刻まれた。
その後のことは覚えていない。
気づいたら俺はおばあちゃんの家にいた。
それからお葬式や家の片づけを淡々とこなし、隣の県のおばあちゃんの家へ住まいを移して俺は1からスタートを切った。
『空羽くーん!おはよっ』
『おはよ‼』
転校先でも友達はすぐにでき、転校してきたことによる不安なんてすぐになくなった。



