『ひどい霧ね。さっきの雨のせいかしら…』



『そうだろう。これは慎重にいかないとな』



『えぇ』



お父さんは決して油断してたわけじゃない。


だけどもう少しで森を抜ける…




──────そんな時に事故は起こった。




最後のカーブに差し掛かった時、対向車線から大型トラックがものすごいスピードで突っ込んできた。


霧のせいでトラックの姿をギリギリまで確認することが出来なかった。


あそらく相手のトラックも…。


咄嗟の事にハンドルを逆にきった俺たちの車は









────────────崖の下に落ちた。



















『い、たたた…』



反動で車から投げ出された俺は、打ち付けられた身体を起こし辺りを確認する。



『お、お父さん。おか…あさん』



思うように動かない身体で必死にお父さんとお母さんの姿を探す。


少し進むと煙をあげながら燃え盛る一台の車が目に入った。


目を凝らして見るとそれは俺たち家族の車で。


俺は急いで駆け寄った。



『お父さん…っ』



燃え盛る火と煙によってうまく近づけない。



『お母さん…っ』



それでも必死に辺りを探した。


もう車の中にはいないだろう…そう信じて。














数分後。サイレンの音と共に消防車や救急車が駆け付けた。


俺はまだ、お父さんたちの姿を見つけられないまま…


嫌な予感が頭をよぎる。



『キミ、危ないから少し避けていようか。これはキミが乗ってた車かな?』



駆け付けた消防隊の人に声をかけられる。



『お父さん、と、お母さん、が、いない…んです』