そう俺が好きだったのはテニスなんかじゃなく…野球だった。
『うん!この前ね、試合で三振取ったんだよ!小さい子だけの試合だけど…』
『どんな試合だって関係ないさ。空羽がどれだけ頑張ったかが大事だろ?』
『へへっ』
地域のクラブチームにだって入団してた。それくらい野球が大好きだった。
休日はいつもお父さんとキャッチボール。
家の前、公園、広場…。
どこへ行くにもグローブとボールは必須だった。
『よし、行くぞー。…て、あれ?雨か?』
楽しくキャッチボールをしてた、そんな時。
予報にはなかった突然の雨が俺たちに降り注いだ。
『おかしいわね…。とりあえず屋根のある所に移動しましょう』
小さかった雨粒は次第に激しさを増し、地面を濡らしてゆく。
売店のかげで雨宿りをした俺たちはただひらすら、雨が止むのを待った。
───────40分後。時刻は16時。
激しかった雨はすっかり姿を消し、日差しが戻ってきた。
『雨、やんだなぁ』
『通り雨かしら』
売店でソフトクリームを買ってもらえた俺は上機嫌。
『16時か。そろそろ帰ろう』
そのまま車に乗った。
この時
''帰りたくない''
そういえば、あんなことにはならなかったのかな…。
──────帰り道。
森を通って来なくちゃならないこの公園までの道は細くて。
二台通れるのがやっと。対向車は出来れば来てほしくないようなそんな道だった。
出発して少し経った頃、辺りは霧でだんだん視界が悪くなってきた。



