奏穂とは沢山の思い出を重ねてきたよね。
私の最期の思い出の振り返りに少しだけ付き合ってもらえるかな。
私の思い出にはいつだって奏穂がいるから。
…小学3年生。私は奏穂と出会った。
あの頃は私も暴力をふるわれだしたばかりで、希望なんてまるで見えなかった。
生きることに絶望さえ感じていた。そんな時、私の人生に。
───────奏穂が突然入り込んできたんだ。
まだ3年生のくせに人を拒絶して。奏穂はそんなどうしようもなかった私と友達になってくれた。
すごくすごく嬉しくて、生きててよかったって初めて思った。
あの時の感動は今でもはっきり覚えてる。
それから私たちはすぐに仲良くなったよね。
近所の公園で追いかけっこしたり、遊具で遊んだり、時には2人でかくれんぼもした。
初めて奏穂の家にお邪魔した時は
''家ってこんなに暖かいんだな''って涙をこぼしそうになったっけな…。
でも不思議と奏穂に嫉妬心はなくて。ただただ羨ましかった。
ご飯をご馳走になったり一緒にお風呂に入ったり。沢山沢山遊んだね。
そうして過ごすうちに早2年。私たちは5年生になった。
日に日にエスカレートする暴力に奏穂は気づいていたはずなのに。
私の怪我について深く追求してこなかった。最初は気づいてないんだと思ってたんだ。
でも、奏穂の精一杯の優しさだったんだね。
それに気づいた時は私の友達が、親友が奏穂でよかったって心から思った。
ずっと隠しててごめんね。
きっと奏穂には悲しい思いを沢山させてたと思う。今なら分かるよ。
実は私ね、4年生の夏休み明けたくらいから奏穂には話そう。大事な友達だから。



