あの時は、ただ奏穂のためだけを思ってしたことだった。
けど、こうなるなら…
奏穂がこんな風に自分を責め続けるなら、そのままにしておけばよかったのかな。
正解なんて分かんねーけど。
いつかは言わねーとって思ってたから…今がその時かもしれねぇ。
「奏穂、帰ったら俺の部屋に来てほしい。奏穂に、
────────渡さなきゃなんねーものがある」
知ったら奏穂は怒るだろうか。それとも泣くんだろうか。
分からねーけど。
それを知って、少しでも奏穂の気持ちが楽になればいいな…。
「うん…?分かった」
「戻ろーぜ。危ねーから手ぇ貸せ」
「うん。…海叶」
「どした?」
「来てくれて、ありがとう…」
「…あぁ」
俺は奏穂と来た道を戻りながら、机の中に眠る奏穂への唯一のヒミツ、
────────────黒木から奏穂への最期の手紙を思い浮かべていた。
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「それじゃあ海叶くん。奏穂をお願いね!成実、心さんお願いします」
「すいませんがお世話になります。空叶くんも、奏穂を頼むよ」
戻っておばさんたちと合流すると帰る準備が丁度整ったところで。
何も聞かないでくれる皆に感謝しながら俺たちは車に乗った。
車の中で奏穂が俺の部屋に用事があると伝えると、なぜかそのまま泊まるという話になり…今に至る。
車を降りた俺たち室沢家と奏穂は、車の中のおばさんとおじさんに手を振る。



