あの時は、ただ奏穂のためだけを思ってしたことだった。


けど、こうなるなら…


奏穂がこんな風に自分を責め続けるなら、そのままにしておけばよかったのかな。


正解なんて分かんねーけど。


いつかは言わねーとって思ってたから…今がその時かもしれねぇ。



「奏穂、帰ったら俺の部屋に来てほしい。奏穂に、

────────渡さなきゃなんねーものがある」



知ったら奏穂は怒るだろうか。それとも泣くんだろうか。


分からねーけど。


それを知って、少しでも奏穂の気持ちが楽になればいいな…。



「うん…?分かった」



「戻ろーぜ。危ねーから手ぇ貸せ」



「うん。…海叶」



「どした?」



「来てくれて、ありがとう…」



「…あぁ」



俺は奏穂と来た道を戻りながら、机の中に眠る奏穂への唯一のヒミツ、









────────────黒木から奏穂への最期の手紙を思い浮かべていた。














✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣














「それじゃあ海叶くん。奏穂をお願いね!成実、心さんお願いします」



「すいませんがお世話になります。空叶くんも、奏穂を頼むよ」



戻っておばさんたちと合流すると帰る準備が丁度整ったところで。


何も聞かないでくれる皆に感謝しながら俺たちは車に乗った。


車の中で奏穂が俺の部屋に用事があると伝えると、なぜかそのまま泊まるという話になり…今に至る。


車を降りた俺たち室沢家と奏穂は、車の中のおばさんとおじさんに手を振る。