「海叶にも、話してなかったよね。杏結莉の事は何も」
「…あぁ」
「杏結莉と出会ったのは小3の春。大人しかった杏結莉には、
大きなヒミツがあった──────────────」
奏穂は少しずつ、ゆっくりと言葉を紡いでいく。
きっと誰も知らない。
奏穂がずっとヒミツにしてきた黒木との友情とあんなことになってしまった理由。
それを話そうと一生懸命な奏穂に近づき腰を下ろした。
おばさんとおじさんに黒木が奏穂の前で亡くなった事を伝えたのは俺。
親友を突然亡くした奏穂は当然無理だし、だからと言って様子がおかしいのが一目瞭然の奏穂を前に何も伝えないわけにはいかねーから。
勝手だけど俺の分かる範囲で伝えさせてもらった。
俺の両親がその事を知ったのは奏穂がだいぶ落ち着いてから。
おばさんから伝えられたらしい。
俺がおばさんたちに言ったように
''そっとしておいてあげてほしい''と。
「あたしは、杏結莉を助けられなかった。支えてるつもりでいただけで、何もしてあげられてなかった…」
やっぱり奏穂は今でも自分を責め続けていた。
けどな、違うんだ。
黒木はそんなこと、思ってなんかねぇ。
「そんなことねぇ。奏穂は、ちゃんと黒木の支えになってたよ」
俺は奏穂に隠し事なんて作ろうと思ったことなんてねーけど。
だけど1つだけ。
────────奏穂に言ってねぇことがある。
「そんなの、都合のいい解釈にすぎないよ。本当に支えになってたなら杏結莉は…死ぬはずがないの…」



