あともう少し遅かったら…
そう考えるだけで俺は身体が震えた。
『海叶…離して、離してよ…!あたしは、杏結莉の所にいかなくちゃいけないの……』
『…行かせねぇよ!いかすわけねーだろ⁈俺がいるから…ずっと傍にいるから。だから…死のうとなんてするな…っ』
奏穂がいたのは
───────────1年前、黒木が飛び降りたマンション。
今日は黒木の命日だから。だからここにいるんじゃないかって思ったんだ。
莉玖翔や空羽、芽依と出会って少しずつ前を向けるようになった、
また笑えるようになった奏穂。
だけどそれは人前で取り繕ってるだけで。
全然奏穂らしくなかった。
人の前でどれだけ普通でいても、部屋に帰れば毎日のように泣いてた。
俺は知ってる。
1年経った今でもまだ全然、黒木のことを想って立ち直れていないこと。
奏穂は今でもずっと、黒木が死んだのは自分のせいだと自分を責め続けている。
奏穂のせいじゃねぇのに。
あいつはずっと苦しんでくしかねぇの?
そんなの、あんまりだ。
だったら俺は、これ以上奏穂が傷つかねーように傍で守ってやりたい。
いつだって奏穂が安心できるように俺が支えてやりたい。
大事だから、失いたくねぇから。
だから俺は
──────────大好きだったサッカーもやめる決意をしたんだ。
─────────────────────……



