沢山の苦痛を共に抱えてきたお母さん。
お母さんと一緒だから頑張れるんだって笑ってた杏結莉。
杏結莉の一番の心の支えは、
あたしでも他の誰でもなく、お母さんだと思う。
そんなお母さんが…
まさか───────────
杏結莉の気持ちを想うと胸が張り裂けそうだった。
早く、
─────────早く杏結莉の所に着いて…。
あたしは無我夢中で杏結莉の元へ走った。
『…はぁ…っ、杏結莉っ───────』
やっとの思いでたどり着いた病院の入り口にしゃがみ込む小さな彼女に声をかける。
あたしの呼び声にあげた顔は色がなく、放っておけば今にも消えてしまいそうだった。
『遅くなって、ごめんっ…』
杏結莉の前で立ち止まり、息を整えながら口を開く。
立ち上がった杏結莉は
『わざわざ、ごめんね?』
何でもないように力なく笑うから。
あたしは目の前の杏結莉を抱きしめた。
密着する身体から杏結莉の小さな震えが伝わってくる。
『我慢しなくていいよ…。せめてあたしの前でくらい弱音を吐いてよ。…強がらなくて、いいんだよ…杏結莉』
あたしの言葉に堰を切ったように溢れ出す杏結莉の涙は、あたしの服に染みていく。
『…かなほっ。お母さん、いなくなっちゃった…っ。大好きだったのに…っ、どうして…?どうしてよ…、お母さん…っっ───────』
杏結莉があたしの前で涙をこぼすのはこれが初めてだった。
いつも、どんなに辛いことがあっても、
杏結莉は泣かなかったから。
我慢してたんだと思う。
弱さを人に見せないように必死に我慢してたんだよね。
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